
第6章 若手・学生起業家向け指導・支援のノウハウ
この章では、最近増加しつつある若手・学生起業家向けの指導・支援のノウハウを説明します。特に、従来型の起業スタイルとはかなり異質な点もあるので、そのあたりのことを中心に説明を加えます。
1.若手・学生の起業が増加した背景
- 【質問】
- 最近、若手・学生の起業が盛んになってきましたが、それにはどのような背景があるのですか。
ポイント
- (1)ビジネス環境の変化
- (2)若者の価値観の変化
アンサー
- (1)ビジネス環境の変化
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- [1] 大企業へ就職することの価値の低下
従来、日本では、一流大学を卒業して一流企業、官公庁などに就職することが、生涯所得を高めることにつながるとされてきました。さらにそうした組織に所属することが本人やその家族のステータスとさえなっていました。しかし、現在は新卒といえども就職難の時代です。さらには、運良く企業に就職できても、最近の企業のリストラ、倒産などの実例をみると、就職さえできれば一生安心といった時代ではなくなってきています。
- [2] 能力主義の導入
能力主義を採用する企業が日本においても増加してきました。しかし、能力主義といっても、ほとんどの場合、それは人材の早期選別や賃下げである場合が多いようです。このような現実を目の当たりにして、大企業の従業員ですら、終身雇用制を前提とした従来の人生設計はもはやできないのではないかという不安を持ち始めているのが現状です。
- [3] ベンチャー企業への社会的なニーズの増大
現在失業率の高い日本の産業は、構造転換、新たな雇用の創出を求められており,新産業の創出が重要です。その担い手としてのベンチャー企業に期待が集まっており、ベンチャー支援をする公的な機関が設立されています。また、制度面での整備が進んできました。
- [4] 規制緩和によるビジネスチャンスの増大
従来、日本では、強い規制や行政指導が、かえって日本企業の外資系企業に対する競争力を弱めてきた感があります。こうした分野で、規制緩和を実施した場合、いち早く海外などの先進地域の事業ノウハウをそのままコピーしただけで大きなビジネスチャンスを得る可能性があります。例えば、ここ数年だけをみても、スカイマーク・エアラインズや地ビール会社、セルフ式のガソリンスタンドなどが規制緩和の結果、誕生しています。
- [5] インターネットの発達
インターネットの急激かつ世界規模の発達は、ビジネス環境を大きく変革しており、その度合いは今後ますます大きくなるものと考えられます。この分野はあまりにも変化が激しいので、柔軟な思考ができる若手起業家でなければビジネスの現状を理解することが難しくなってきています。またインターネット上では会社の規模は重要ではなくなってしまい、ベンチャー企業も優れた商品・サービスを提供することにより、大企業に対抗することができます。
- (2)若者の価値観の変化
- 最近では、若い世代の中では、「責任を伴うことはなるべく回避したい」という傾向がみられます。しかし、その一方で「独創的でありたい」とか、「自分の夢を実現させたい」という意識も強くなっているようです。
■若手・学生起業家の増加

2.若手・学生の起業の成功例
- 【質問】
- 若手・学生起業において成功しているビジネスにはどのようなものがみられますか。
ポイント
- (1)流通サービス系ビジネス
- (2)研究開発系ビジネス
- (3)技術企画系ビジネス
アンサー
ここでは若手・学生起業において多くみられる流通サービス系ビジネス、情報通信分野において活躍している研究開発系ビジネス、そして技術企画系ビジネスについて紹介します。
- (1)流通サービス系
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日本において成功している若手の起業は、流通サービスの分野において多く見られます。日本の流通過程は複雑で、既得権益による高コスト構造が各分野にあるといわれています。
しかし、過去のしがらみがなく既得権益に縛られていない若手起業家は、自ら流通サービス過程に変革を起こすことが可能です。変革を通じて、経済の生産性を向上させることにより、その貢献に対して報酬を受け取るというタイプです。
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代表例
- [1] 「フォーバル」
- OA機器販売会社を20代半ばで設立し、30代前半で株式公開
- [2] 「プラザクリエイト」
- 直営店とチェーン店からなる「フジカラーパレットプラザ」を全国規模で展開し、30代前半で株式公開
- [3] 「ファースト・リテイリング」
- カジュアル衣料専門店で、独自企画の「フリース」等低価格・高品質製品で成長し、「ユニクロ」を全国で展開中
- (2)研究開発系ビジネス
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欧米諸国と同様に、日本においても、情報通信など先端技術分野で活躍する研究開発系のベンチャー企業の活躍が盛んになってきています。一度普及すると大きな収益を得ることができますが、研究開発投資において問題を抱えるベンチャー企業は少なくないようです。
研究開発系のベンチャー企業の多くが、優れた技術を有している場合でも、流通サービス系の企業に比較すると、その大きな潜在性を十分に発揮していないのが現状です。研究開発系の場合、研究開発投資の負担が重く、起業してからしばらくの赤字段階の間、十分な資金がなければ研究開発が続かなくなってしまいます。そのため、研究開発投資のための十分な体力のない多くのベンチャー企業が挫折しています。
最近は、マザーズやナスダックジャパンの設立などが、優れた技術を有する起業家が、市場から研究開発費を直接調達できる時代になりつつあり、今後、研究開発系のビジネスの成功事例が増加することが期待されます。
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代表例
- [1] 「鷹山」
- 次世代携帯電話向けのシステムモジュール(W-CDMA方式)の開発
- [2] 「インフォシティ」
- 放送と通信の融合分野を得意
- (3)技術企画系ビジネス
- 技術企画系ビジネスにおいては、事業企画力が重要です。技術企画系のビジネスをする場合には、大企業が類似した商品を後から出してくることを予め予想し、大企業が追随してきた場合は、さらに先行するだけの事業企画力や商品の差別化をするための技術力を有している必要があります。
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代表例
- 「デルコンピュータ」
- 顧客データベースを活用したマーケティングや直販のノウハウ、充実したサービス体制からなるビジネスモデルを確立
- 【アドバイスポイント】
- 最近は若い人向けマーケット製品・サービス分野や新技術を応用した分野等での若手の活躍が目立っています。
■流通系サービス、研究開発系サービス、技術企画系サービス

3.若手・学生の起業の成功のポイント
- 【質問】
- 若手・学生起業の成功のポイントは何でしょうか。
ポイント
- (1)ビジネスチャンスの発見
- (2)経営パートナーを見つける
- (3)高い目標の設定
- (4)ビジネスをしながら、ビジネスモデルを創っていく
- (5)顧客の視点
アンサー
- (1)ビジネスチャンスの発見
- 起業においてまず何よりも重要なのは、ビジネスチャンスを見出すことです。例えば、既存の熟達したスキルが効力を失いつつある分野などでビジネスチャンスを見出すことができます。若手起業家は変革速度の遅い事業領域にスピーディーに参入することにより、熟達したスキルを持つ先輩に対する不利をカバーすることができます。戦略次第では、過去の慣習に縛られていないために、キャリアの長い先輩に対して競争優位を確保することすらあります。また成熟しきった分野においても、柔軟に視点を変えることにより、ビジネスチャンスが見出される可能性があります。
- (2)経営パートナーを見つける
- 若手の場合は、経営経験不足ということがあり、優れたアイデアをもっていたとしても、事業として成功することは難しいため、優れた経営能力のあるパートナーを見つけることが重要です。そして事業を進めながら経験を積んで、経営能力を伸ばしていくことです。
- (3)高い目標の設定
- 厳しい経営環境を乗り越えていくには、株式公開を目指すなどの目的意識を持つことが重要です。ただ漠然とビジネスをしているだけでは、結果的に株式公開できるということはないでしょう。
- (4)ビジネスをしながら、ビジネスモデルを創っていく
- 若者が最初から特殊な専門知識や優れたビジネスモデルを有していることは極めて稀なことです。しかし、ベストなビジネスモデルを構築するまで、起業のための勉強をするというのも時間の無駄です。成功した起業家を見てみると、走りながらビジネスモデルを洗練させていったケースが多く見られます。
- (5)顧客の視点
- 流通サービス系、研究開発系、技術企画系に関わらず、顧客の視点にたってビジネスをするという姿勢が重要です。経営経験の少ないうちは、優れたアイデアを思いつくとそれに固執してしまい、それを中心にして事業を行ってしまうケースが見られます。特に研究開発系や技術開発系のビジネスにおいて、そのような傾向が見られ、事業に失敗するケースがあります。
- 【アドバイスポイント】
- 経営環境は常に変化しているので、自分のアイデアに固執せずに、顧客の視点に立ったビジネスモデルを、事業を行いながら構築していくことが重要。
■若手・学生起業家が成功するポイント

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